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コンタクタの構造を徹底解説:接点メカニズムと長寿命化のカギ
コンタクタは、機械や設備の電源供給を制御するために用いられており、近年では電気自動車の給電設備に用いられるなど、産業界全体でその活用の範囲は広がっています。その一方で設備における重要性から、整備現場への適切なメンテナンスの期待はますます高まっています。
コンタクタの長寿命化のカギは、「正しい構造の理解に基づく、適切な点検と清掃」です。
本記事では、コンタクタの構造と仕組み、接点材料、アーク消弧技術、そして長寿命化のカギとなるメンテナンス方法について詳しく解説します。
整備現場での作業に重要な情報をお知らせしますので、最後までご覧いただき設備の安定稼働にお役立てください。
コンタクタの内部構造
コンタクタの内部構造は、『コイル』、『主接点』、『補助接点』を主要部品とする『磁気回路』で成り立っています。基本的な回路と構造は下図のとおりです。
出典:オルブライト社カタログ(回路図)
コイルと磁気回路の仕組み
コンタクタの動作に関わる最も重要な要素は、『コイル』を用いた『磁気回路』です。これらの役割を知ることで、メンテナンスの理解に必要なコンタクタの仕組みがわかります。
コイルの基本と機能
コイルは、コンタクタが電気的な機能を持つための中心要素で、電流から磁場を生成する部品です。
絶縁された導線を鉄心に巻きつけた構造で作られ、巻き数や線の太さ、使用される材料で発生する磁場の強さが決まります。例えば、コイルの巻き数が多いほど磁場が強くなります。
製造品質が信頼性に大きく関わるため、信頼のおけるメーカーのコイルが使用されていることが重要です。
磁気回路による電磁力生成の仕組み
『磁気回路』とは、コイルでの磁界発生と、それにより『電磁力』を生成・制御する回路全体を指します。コイル、鉄心、接点部品、およびそれらを安定的に働かせるための組み立て部で成り立つ回路です。
コイルが生成する磁場は鉄心を通して電磁力を生み出し、接点を引き寄せ動作させます。鉄心は強力な磁界の発生を可能にし、必要な電磁力を最小限の材料で生み出すために重要な部品です。
磁気回路において最適な接点の動作速度や長寿命を実現するには、鉄心の形状の工夫や、磁場を考慮した部品の配置と製造品質が重要であり、製造メーカーの経験とスキルが問われます。
接点材料(銀合金、銅合金など)の特徴
接点材料はコンタクタの性能と寿命に直結するため、非常に重要です。ここでは、主要な接点材料である『銀合金』と『銅合金』の特徴と、それぞれの利点・欠点について解説します。
銀合金の特徴、利点と欠点
銀合金は、銀とパラジウム・金・白金などの合金であり、コンタクタの主接点材料として最も多く使用されています。
導電性と耐酸化性・耐硫化性が銅合金と比べて高いことが特徴的です。また、銀合金として使用することで、純銀よりも酸化被膜・硫化被膜が形成されにくくなり、接点の耐久性が増します。
銅合金と比べ、より高い導電性と耐久性があることが利点ですが、コストが銅合金よりも高いことが欠点です。
銅合金の特徴
銅合金は、銅と錫・リンの合金であるリン青銅や、タングステンとの合金であるエメ-Cなどがあり、コストパフォーマンスに優れた接点材料として注目されています。導電性が良く、合金化により接点の耐腐食性や耐摩耗性が向上している材料です。
銅合金接点の利点は、銀合金に比べてコストが低く、経済的な選択肢となることです。ただし、銀合金に比べると導電性や耐久性に劣るため、用途によっては適さない場合があります。
アーク消弧技術と接点損傷の抑制
アークは、コンタクタの接点が開閉する際に発生する放電現象です。接点が開く瞬間に電流が急激に切断されることで、空気中に高温のプラズマが形成され、接点間で放電が生じます。
直流回路では、電流が一定方向に流れ続けるため、アークが持続しやすいのが特徴です。アークが持続すると、接点の表面が溶融し、長期的には接触不良や機能不全の原因になるため、適切な対策(アーク消弧対策)が求められます。
アーク消弧方式の種類
コイルのインダクタンス調整による消弧方式
コイルのインダクタンスの調整により、過渡電圧を緩やかにし、アークの持続時間を短縮する方式です。コイルにダイオード、またはダイオードと抵抗を追加することで、インダクタンスの調整を行うため、小型のコンタクタで利用しやすい方式となります。
マグネティック・ブローアウト方式
ブローアウトコイルによる磁場を使いアークを接点から遠ざけ、コンタクタ内の消弧室までアークを引き延ばし、エネルギーを分散させて消弧させる方式です。大型以外に小型のDCコンタクタでも利用が可能となります。
ガス吹付け消弧方式
接点間に発生するアーク放電を、SF6等の高圧ガスを吹き付けて消滅させる方式です。送電系統のガス遮断器などで多く使用されています。空気遮断方式
圧縮空気を吹き付けることでアークを消弧する方式です。火災リスクが少ないのが特徴ですが、大きな補助機器が必要となります。
これらのアーク消弧技術は、それぞれ異なる特性と利点を持っているため、使用環境や用途に応じて活用されています。
長寿命化を実現するメンテナンス・点検方法
コンタクタの長寿命化を実現するためには、適切な点検とメンテナンスが欠かせません。ここでは、効果的な点検方法とメンテナンス手法について解説します。
定期点検の実施方法
定期点検は、コンタクタの性能維持と故障予防において非常に重要です。定期的に点検を行うことで、早期に問題を発見し、適切な対策を講じることができます。具体的な点検内容は以下の通りです。
接点の状態確認:
接点を目視できるコンタクタの場合、接点の摩耗状況や、酸化・溶融の状態を確認し、問題の有無を判断します。
コンタクタの外観および異臭確認:
過熱での焦げや溶融による損傷や変色、また異臭の有無で、劣化や異常を判断します。
電流確認:
接点が閉じている際の電流に異常がないか確認し、酸化・硫化被膜や焼き付きによる接点不良の有無を判断します。
動作確認:
コンタクタが正常に開閉するか動作確認を行い、溶着などの異常の有無を判断します。
これらの点検は、スケジュールを設定し、記録を残しながら確実に行うべき内容です。
この点検結果に基づき、清掃などの必要なメンテナンスを計画・実行することで、コンタクタの長寿命化につながります。
清掃の実施方法
コンタクタの内部を確認することができる場合、また接点が外部に露出している場合は、清掃を行い、コンタクタの性能維持と長寿命化を図ります。特に接点表面に汚れや酸化物が付着している場合は、接触抵抗がアーク発生の要因となり、コンタクタの寿命が短くなる可能性があるため重要です。
清掃の実施方法として以下の手順と内容が推奨されます。
電源の遮断
安全のため、コンタクタにつながる入力電源を完全に遮断します。他の作業員が間違って電源入力を復帰しないよう表示やブレーカーへの施錠など行うことも重要です。
接点表面の曝露
接点がよく見える状態にし、汚れや酸化の程度を再確認します。
接点の清掃
布で丁寧に接点の汚れを拭き取ります。クリーナーを用いる場合は、接点材料に適したメーカー推奨のクリーナーが必要です。また接点以外に付着しないよう、布などに染み込ませてから、接点のみを清掃します。
接点清掃後確認
清掃後、接点が完全に乾燥していることを確認します。また清掃後にごみが付着していないか再確認が重要です。
その他の清掃
コイル回りなど開く構造の場合には、ほこり等をエアガンなどで取り除きます。
復旧と動作確認
コンタクタを元に戻し、安全な状態を確認した上で電源入力を復旧し、動作確認を行います。
予備品の保有と交換基準の設定
コンタクタの接点やコイルなど内部構造の部品は、長期間使用の劣化により、性能の低下や故障を引き起こす可能性が上がります。機械や設備の停止を防ぐため、長寿命化の対応以外にも、予防的な交換整備を計画することが重要です。
具体的な予防交換のポイントは以下の通りです:
定期交換時期の検討:コンタクタメーカーが定めるライフサイクル(開閉回数)の情報を参考にし、使用環境に応じた定期交換スケジュールを設定します。
予備部品の準備:予備部品を常備し、故障時に迅速に交換できる体制を整えます。
交換作業の標準化:交換手順を標準化し、誰でも適切に交換できるようにマニュアルを整備します。
記録管理:交換履歴を詳細に記録し、劣化の傾向を分析します。
品質管理:交換用の予備部品は適切に管理し、信頼性のある部品で交換を実施します。
まとめ|コンタクタの長寿命化には適切なメンテナンスが必要
コンタクタの内部構造と動作の仕組みを理解することで、確認のポイントがわかり、メンテナンスがより効果的になります。
接点材料には種類と特徴があることを理解し、材料にあったメーカー推奨の清掃方法で実施することが重要です。
点検とメンテナンスの定期的な実施で、コンタクタの長寿命化が図られ、装置や設備の信頼性が向上します。
予防交換整備を行うことで、部品の劣化に対する備えを強化し、突発的な故障を防ぎます。
コンタクタの構造や仕組み、メンテナンス方法についての理解は、コンタクタを長く使う上で非常に重要です。
今後の設備管理において、これらの知識と方法を活用し、安定した設備の維持を目指してください。
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